「こいつらも私に使われることを望んでいるのだよ。(うろ覚え)」
男の無骨な指がルルーシュの白い頬を滑って行く。
馴れ馴れしすぎるその態度に如何せんルルーシュもカチンときた。
こいつ一発ぶん殴ってやるか。そう思った時だった。
「触るな…げ「「僕の兄さん(私のゼロ)に触るなボケーーーー!!」」
すこーんと、素晴らしく同じなタイミングで両の頬を殴られる貴族A。
そのまま何メートルも吹っ飛ばされて壁に激突、ピクリとも動かなくなってしまった。
得体の知れない馬鹿力な乱入者に一瞬混乱しかけるが、聞き覚えのある声にすぐ誰だか判明する。
「兄さんっ貞操は無事!?」
「ルルーシュ!私が来たからにはもう安心よ!!」
「お前ら…。」
どうしてここに?とコクリと傾げられる首。
駆け付けたロロとカレンは「可愛い可愛い可愛い可愛い」なんてエンドレスリピートだ。
貞操などというどう聞いてもおかしいワードは完璧に聞き流したらしいルルーシュは、顔見知りにほっとして自然と微笑んだ。
華のような、美しく儚い思わず庇護欲をそそられる様な顔に、ロロもカレンもノックアウト寸前である。
(駄目だ…兄さん可愛すぎる!やっぱりゼロは止めさせるべきだ!だって子羊を狼の群れに放り込むようなものだし!!)
(やっぱりルルーシュは私が守らなきゃ!どこの馬の骨とも知れない奴になんか渡さないんだから!!)
何やらそれぞれ思惑があるのか拳を握り締めて燃える二人に、少々引きながらもルルーシュはお礼を言った。
まぁ助けてもらわなくても、自分で何とかする気満々だったのだが。
「…助かったよ二人とも、ありがとう。でも、どうして俺がここだと?」
不思議そうなルルーシュに、ロロとカレンの両人とも満面の笑みで返す。
それはもう最高というか、不自然なくらい。
「僕は兄さんがいる所なんてすぐ分るよ!兄さんの事ならなんでも知ってるし、たった一人の家族だから!!」
「ろろっ…」
いやいやそれ答えになってませんよ!
気付けルルーシュ、絆されかけてる!!
カレンの叫びは喉の奥に留まった。
それならばと自分も負けじとアピールすることにしたらしい。
「わっ私は、その。ここが貴方が始まった場所だから!私と貴方の記念の場所なんですよ!!」
「カレンっ…」
なんか、恋人同士みたいになってるよ兄さん。
ただしこの場合はどう考えても立場が逆。
兄さんが彼女の役で、紅月カレンが彼氏役だけど。
あぁぁぁ気に食わないことこの上ないよ!!
ロロの不満は口に出すことは無かったが、態度にはもろ出ている。
それにしても、つくづく性別間違えて生まれてきちゃったよな、なんて皆が思ってるのはここだけの秘密。
「ねぇ、兄さんはゼロを止めるべきだ。大丈夫、その後は僕が娶ってあげるから心配いらないよ☆」
「そ…そうか?……あれ、娶る?」
「大丈夫よルルーシュ。私が貴方に相応しい婿をキッチリ探してあげる。まぁ見つからなくても私が娶ってあげるし…///」
「あ、ありがとうカレン。……あれ、てか俺娶られる、のか?」
なんだか事のおかしさに気がついたルルーシュだが、もう手遅れだ。
身の危険を感じて後ずさるも、壁に阻まれてそれさえ出来なくなってしまう。
背中は、壁とお見合いしている。
「ぅ…あ、」
「大丈夫、任せて兄さん。」
「大丈夫、任せてルルーシュ。」
「…ひっ!」
喉が引きつって変な音をたてた。
その言葉はあてにならないことを、彼は身をもって経験済みである。
だってこの言葉は、今はこの場にいないイレヴンの騎士がいつもルルーシュを襲う前にロイヤルスマイルで吐いた言葉だ。
あの体力馬鹿に付き合わされて、どれだけ身体を痛めたことか!
思い出してカタカタと震える彼を尻目に、目前の二人もまた、ロイヤルスマイルで微笑むのだった。
「幸いここには僕ら以外いないし。…唯一邪魔なのはこの女だけど。」
「さっ、ルルーシュ。…この偽物さえいなきゃ最高なんだけど。」
「そっその手は何だ!止めろ、どこ触って、ひっぬぬぬ脱がすな!!」
その後何があったかは、ルルーシュは決して口を割らなかったという。
終わり。