ナイトオブラウンズの仲良し三人組は、本日もテロ活動の鎮圧に勤しんでいた。
ただ倒しても倒しても虫のように湧いてくる残党に、そろそろスザクなんかは堪忍袋の緒が切れそうである。それに今日はモルドレッドの動きがどうも鈍い。
恐らく操縦士であるアーニャの気分が乗らないか、別のことに集中しているかだ。
そしてこの場合後者なのだろうと踏んだスザクは、通信をつないで注意しようとする。
「―――アーニャ!いったい何をしているんだ!」
「スザク、少しうるさい。後ろ、危ないし。」
えらく不機嫌な声をしたアーニャにスザクは怒鳴ってやろうとしたが、丁度よく背後を攻められてそれもままならないまま相手の攻撃を防ぐ。
そこをジノが助けてやって、場違いなほど明るい声で仲裁に入った。
「おいおい。二人とも仲良くしろって。」
「だって、アーニャが!」
「もう五月蠅い!通話中なんだから黙って。」
珍しく声を荒げた少女に驚いて、うっかりジノとスザクは何も言えなくなってしまった。
―――てか、通話しながら操縦してたのか!
良い子はマネしちゃダメ!絶対!
「…もしもし?私?全然忙しくない。本当。」
どの口が言うんだどの口が!
聞こえた電話相手との会話に思わず突っ込みそうになる。
とそこで、モルドレッドへと忍び寄るテロリストのナイトメアが視界に入った。
が、アーニャはそれに全く気づいないらしい。相変わらず会話に夢中のようだ。
故にジノとスザクはこういう判断を下した。
ここで万が一機体が襲われても、それは彼女の自業自得であると。
考えた本人たちは軽い気持ちだったのだ。
これで少しは勤務態度も真面目になるだろうと。
ただこの浅はかな考えが後に大きな問題を引き起こすことも知らずに。
「それにしても、―――ッ!?」
「ブリタニアめェェェェ!!覚悟ッ!」
モルドレッドが大きく揺れ、しかしなんとか攻撃は防いだようだ。
そのボディには傷一つついていない。
しかし彼女にとっての問題はもっと別のところにあった。
耳元でツーツーと言わなくなった携帯と襲ってきた敵を交互に睨みつけ、アーニャは静かに、
それはそれは恐ろしく微笑んだ。
「もう、怒った。」
「は?あの、」
「おーい?アーニャー?」
只ならぬ雰囲気を読み取ったのか、トリスタンとランスロットが彼女の元へと近寄った。
だがあと一歩のところで足もとに境界線のようなものが引かれてしまう。
「アーニャ!これは!?」
スザクが恐る恐る尋ねた。
何となく予想はついたが、それが外れていることを真摯に願って、だ。
しかし現実はそう甘くはない。
「この線からこちら側に入ってきたら、私、貴方達の身の安全は保障できない。」
滅多に見せないエンジェルスマイルで、少女はそうのたまったのだ。
よっぽど電話が切れたのが悔しかったらしい。
じゃあそんなところですんなよの一言でも言ってやりたいが、自分の明日が心配なので諦めた。
大人しく引き下がる二機をよそに、ピンクのごつい機体から至極楽しそうな死刑宣告が流された。
「お前たち、全員ぶっつぶす。」
後にその場に居合わせたラウンズの二人は、あの日の彼女はまさに鬼神のようだったと顔を青くして語ったそうだ。
(ルルーシュ、さっきはごめんなさい、切っちゃって。)
(別に構わないよ。それよりどうかしたのか?)
(何でもない。害虫駆除。)
(??そうか?)
フォローも完璧な模様。
End.
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