お願いがあるんです。

 

 

 

 
 
 
 
何だかんだで、ナイトオブスリーとシックス、それにルルーシュは交流があったりする。
それもセブン様にバレないように巧妙に、こーっそり、二人がエリア11に頻繁に訪れるからだ。
最初は電車の乗り方さえ知らなかったジノも、今では電車はもちろんバスも乗れる。
アーニャなんかは偽造書類や事実の隠蔽までする始末。それもこれも全部我らが御姫様のため、
日々努力を重ねてるんです!と、こんな感じでかなり一方的だけど今日も約束を取り付けて、
騎士の二人はあの子の元に駆けつけるのでした。
 
 
「ルッルーシュやっほー久しぶり!」
「…こないだ会ったばかりだと思うんだが。」
「三日も経てば久しいんですぅー。」
 
 
飛びつこうとしたジノを器用にかわし、アーニャの頭をひと撫でしてルルーシュは苦笑いした。
そのせいで途端に拗ねてしまった彼にフォローを入れて、お茶を入れるのにお湯を沸かす。
弟のロロは友達が遊びに来るという理由で外に行かせた。はち合わせると危険なのだ。
前に一回だけ席を合わせたことがあった。しかし最初の方でロロは敵愾心むき出し、アーニャは目に見えるくらいムカムカ、ジノといえばちょっぴりKYなのかそんな状況で甘えてきたのだ。
それをいらっとした二人に散々攻撃されまさに集中砲火。あのときの憐れさといったらない。
というわけで、絶対に彼らを会わせないようにしているのだ。
 
 
「ルルーシュ、おみやげ。」
「ん?あぁ、買ってきてくれたのか?ありがとうアーニャ。ジノと違って気がきくんだな。」
「えぇー!ルルーシュそれひどくない!?お土産なら私も買ってきた!ほら!」
 
 
腕の中には、中くらいの箱が二つ。
一つ開けると貴族御用達の店のフルーツタルト。多分少女が買ってきてくれた方だ。
もう一つは…なんだろう。すごく軽い。むしろ、すんごく嫌な予感。
ルルーシュは不安になりながらも、ジノと箱、両方見て思い切ってそれを開けた。
そして開けた瞬間に後悔した。いったい、これは、
 
 
「おいジノ、」
「なんだルルーシュ?」
「どうして男の俺に女ものの服なんだ?ん?」
「ルルーシュに似合うと思ったから!な、着てみてお願い!」
 
 
くっ、笑顔がまぶしいなコノヤロウ!
怒ってやろうと思ってたのに、悪気もなくそんなストレートに言われたらそんな気も無くなってしまった。
清楚な白を基調とした膝丈のワンピース。
自分の記憶が確かであれば、このタグに書いてあるブランドは比較的有名な所のだ。
一体、いくらしたのだろう?
 
 
「お願いルルーシュお願いお願いお願いお願い!!」
 
 
だーかーら、そんな目で俺を見るな!流されるじゃないか!
結局、流されたのだけれど。
 
 
「~~~ッッ、分ったよ!一回だけだぞ!一回しか着ないからな!!」
「ルルーシュ、イイの?」
「アーニャ…いいもなにも、俺はあいつのあの顔には勝てないよ、」
「……じゃぁ、私のお願いも聞いて?」
「良いよ、何して欲しいんだ?」
 
 
そうやって諦めたように聞くと、アーニャは少し考えるように首を傾げてうっすら笑った。
『お願い』は思いついたのだろうか?
 
 
「私のはあとで聞いて。だから今は、着替え、いってらっしゃい。」
「…はいはい。」
 
 
自室を指差されて、すごすごとワンピースを手に抱え扉を開ける。
そこではっと気がついた。これを言わなくてはいけないような気が、
 
 
「おいお前ら!着替えは覗くなよ!?」
 
 
 
 
  
  
  
  
 
 
 
 
「すげぇー、すんごい似合ってるルルーシュ。可愛い。抱きしめたい。」
「嬉しくない。っておい抱きしめていいなんて一言も言ってない。」
 
 
なんていうか、はまりすぎ?
白い肌と服の生地が合わさって、もう超純白、花嫁さんなんか目じゃないぜ!ってくらい。
ジノが正直にそう言うと、ルルーシュは呆れたようにひっついていた彼を引き剥がした。
ふぎゃ、とか変な声をあげられたが、そこはスルーの方向で。いちいち気にしてたらキリがない。
ピロリーン、と間抜けな音が背後で聞こえた。うん、知ってる。この音は。
 
 
「アーニャ、今写真撮っただろ。」
「……撮ってない。」
「嘘つきにはお願いは聞いてあげられないんだが。」
「撮った。けどブログには載せない。私だけの記録。」
 
 
あまりにも強くそう言ったため、ルルーシュは一瞬ぽかんとした。
要は訳すと「この姿のルルーシュを見るのは私一人しか許されない」ということになるのだが、
聡い彼もそこまで見抜けなかったらしい。「まぁそう言う事なら」と言って済んでしまった。
 
 
「そういえば、アーニャのお願いって何なんだよ?」
「ジノ、いたの?」
「いたのっておま、一緒に来たじゃん。さっきからずっといるよ!」
「そうだ、ルルーシュ、お願い聞いて。」
「えぇーそこ無視すんなって!かわいそう俺!」
 
 
ジノのその叫びすらも無視した少女は、ルルーシュの前に回り込むとその腕をぎゅっと握った。
それからなんとも簡単に、「耳掃除」ってそれだけ告げて、お願い、と頼んで見せる。
ルルーシュはもっと難解なことを言われると思っていたので正直ドキドキしていたが、思ったよりは普通のことで少し安心した。
 
 
「何だ、そんなことか。いいぞ、ほら寝っ転がって頭乗せて。」
「うん。」
 
 
膝をたたんで正座の形になり、その柔らかな太ももの上をぽんぽんと叩く。
アーニャは素直に言われたとおりにすると、その心地よさにうっとりと瞳を閉じた。
が、その様子を見ていたジノが異議申し立てをする。
 
 
「ちょっ羨ましい!俺もしてルルーシュ!」
「お前はさっきお願い聞いてやったろう。これはアーニャのお願いだよ。」
「そう、ジノは黙ってそこで見てるといい。」
 
 
少女のオーラは、まさに勝者のものだった。
てか見てるだけって最大の拷問ではないのか。そう思いながら、ジノはルルーシュの方をちらりと見る。色っぽいうなじに綺麗な鎖骨のくぼみと細い二の腕やら括れた腰やらで目の毒だ。
でもこれはこれでいいものだなぁと変態じみたことを一瞬思って、慌ててかき消す。
アーニャのバカやろう、一人だけいい思いしやがって。
今度はぜーーーったい、俺もルルーシュに何かしてもらおう!!
そう固く誓った、ジノであった。
 
 
 
(あぁぁぁワンピース捲れあがってるって!中見えそうだよルルーシュ!)
 
 
End.