ものすごくスザクに優しくない話です。 アーニャがスザをいじめてます。スザク好きさんは、本当に注意して読んでください! あとすごく捏造してます。ちょびっと10話から妄想。
遠い昔に、アリエス宮殿のバラ園で撮った写真。
初めて買ってもらった携帯で、初めて撮った思い出の写真。
彼の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、この帝国の皇子様。
あの日、媚びへつらう大人たちを見るのが嫌いだった私はパーティーをこっそり抜け出して、
あの方と会った。優しく手を差し伸べてくれて、話しかけてくれた。
聞けば、私と同じくらいの年の妹がいるそうだ。ナナリー様という名の妹姫様が。
いつか会わせてくれると約束をした。小さな小指を絡ませて交わした契り。
来週またここにおいでって言ってくれたのに。
息を切らせて言ったアリエス宮には、すでにあの方の姿はなかったのです。
日本という国に外交のために送られて、そして戦争は起こり、彼らが戻ってくることはなかったの。
カチャリ、という音が背後でしてスザクは振り返った。
見れば同僚であるはずの少女が自分の後頭部に銃を突き付けている。
あわてずに、相手を刺激しないように、穏やかな口調でゆっくりと問うた。
「……何のつもりだい、アーニャ。」
「私はやっぱりあなたを許せないみたい。いえ、許さない。」
何の感情も籠もっていないように聞こえるが、よく聞けば分かる。
少女の声には憎しみがありありと表れていた。静かに両手を挙げて降伏のポーズをとる。
銃は未だに突き付けられたままだ。
「何の話をしている。」
「何って、ルルーシュ様の話。」
スザクははっと息をのんだ。何故その名を知っている、と言わんばかりに。
そんな空気が伝わったのか、アーニャは表情を変えずに淡々と言う。
「第11皇子17皇位継承者、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様。幼くして母を失い妹姫様もそのテロで光と身体の自由を奪われた。そして日本に捨てられて、この国に戻ってくることはなかったの。」
―――妹姫様の名前は知っているでしょう?
そう問われて自然と顔が歪む。目の見えない身体の不自由な皇女、該当するのは一人しかいないからだ。自分が守りについている、ナナリー・ヴィ・ブリタニアという少女だけ。
あの口調ではアーニャは大体のことは知っているのだろう。
日本に送られたルルーシュ達が枢木の家で過ごし、戦争で別れて再会した時には敵同士、最後には彼をブリタニアに売って自分がこの地位を得たことも、何もかも。
「君は、彼の何なんだ。」
「騎士よ。一番近くにいて、命をかけてその存在を護る盾。丁度スザクがユーフェミア皇女殿下といた時のように。」
「あんな奴とユフィを一緒にするな!!あいつは彼女を殺したんだ!自分の責任を全て押しつけて、大罪人に貶めて!!」
「っ、ルル様を悪く言わないで。」
心底不快、という表情をアーニャは浮かべた。
「知らないことは愚かなこと。でも知ろうとしないのは最早罪。」
「俺が何を知らないと言うんだ!」
むしろ知らないのはそっちの方じゃないのかと叫びたくなる衝動をこらえて、目の前の少女を睨みつける。特に怖気づく様子もないその姿は、余計にスザクを苛立たせた。
「確かにあなたは事実は知っているかもしれない。でもそれまでの過程は?感情は?無視してもいいの?ルル様がどれだけ傷ついたか知らないくせに。ルル様がどれだけ苦しんだか知らないくせに。ルル様という形しか見ていなかったくせに。」
「―――ッッ!?」
いつもと明らかに違う彼女の様子に、一瞬だが気押されてしまう。
スザクが言い返さないことをいいことにアーニャは更に言う。珍しく、はっきりした物言いで。
「スザクにはルル様の友達でいる資格なんかない。傷つけるだけならあの方に近づかないで。」
「皇帝の勅命だ。」
「彼にひどいことするなら例え皇帝であろうとも許さない。」
「それは皇族批判だ!!それ以上言うなら僕は君を捕まえなければならなくなる!」
「そんなものもう関係ない。私の名前はアーニャ・アールストレイム。肩書は、――――黒の騎士団ゼロ直属部隊護衛隊隊長。」
クスリ、と少女は年に似合わぬ笑みを浮かべた。
スザクは一瞬ぞっとした。カチャリ、と後頭部にぴったり付いている銃の安全装置が外された音が聞こえた。
「私はお前を許さない。私の主、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという存在をないものにしたお前を。ルル様が望む事なら何だってしてやる。それがこの国を壊すことであったとしても。」
覚悟していた衝撃は来なかった。
少女はまた安全装置をかけ直すと、腰のホルダーへと戻す。
だがそのことを確認しながらもスザクは動けなかった。
踵を返し去るアーニャの後ろ姿を見ることしか許されない。
「さようなら、枢木スザク。次に会うときは敵同士だけれど。」
嘲笑うかのように、唇の端を釣り上げて言う。
「大切なものを見失ったあなたには、もう何も守ることもできないでしょうね。」
それから祈るように、願うように、呪うように――――。
「どうかあなたのその身に余りあるほどの罪と罰を、神様がお与えにならんことを―――。」
鮮やかなその姿は、夜の闇に紛れて消えた。
End.
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