ナースと未来とエプロンと。

 

 

 

***

 
【僕らのナースはみんなのアイドル!】病院ぱろ。
 




「ルルーシュー!仕事一段落したの?お疲れ。」
「スザク、お前こそ診療はどうした?予定はびっしりだったはずだろう?」
「あぁ、ジェレミア先生にお願いしたら全部替わってくれたよ!」
「(絶対脅しただろ…)コーヒー入れたけど砂糖どうする?」
「わぁ!ありがとうルル!んっとね、僕はブラックかな。」
「じゃぁ私もブラックでお願いするよ、ルルーシュ。」
「兄上、じゃなかった…院長先生。本日は他院で会議のはずでは?」
「兄上でも構わないよ?むしろそっちのが…会議は早めに切り上げてきたんだ。」
「院長先生、机の上に判子を押して頂きたい書類が山ほどあるのですが(にっこり)」
「枢木くんいたの?あとでやるからほっといてよ(にっこり)」
「そうはいきませんよ。仕事には真面目に取り組んでいただかないと(にっこり)」
「それは君も同じだろう?昨日給湯室でジェレミア君泣いてたよ?(にっこり)」
「えぇー何のことでしょうさっぱり分からないんですが(にっこり)」
「はははそれでかわせると思ってるのかい(にっこり)」
「兄上もスザクも、コーヒー冷めるんだが…。(うんざり)」




***
 
 
【いくら後悔しても遅すぎることってあるでしょう?】スザルル
 
 
 
失ってから気づくなんて遅すぎます。
いくら悲しみに暮れても過去は戻ってこないのですから。
ならばやり直したいとおっしゃいますか?
そうして得たものが思った通りのものとは限らないのに?
もっとひどいことになっていたらどうしましょう。
それこそ、取り返しがつかないんじゃなくて?
それでもそうしたいとおっしゃるならば、私は力を貸すまでです。
決めるのはあなた、さぁどうする―――


「ねぇ、ルルーシュ。」
「何だスザク?無駄話なら聞かないぞ。俺はまだ作業が残ってる。」
「君は過去を悔いたことはあるかい?」

放課後の生徒会室にはルルーシュとスザクの二人しかいなかった。
他のメンバー達は押しつけるだけ押し付けて自らの用事に勤しんでいるらしい。
そんな中で交わされた言葉は、いやな重みを持っていた。

そんなの誰だってあるだろう?あの時もっとこうしてれば、とか。」
「そう、だよね。じゃあもし過去に帰れるとしたら、その失敗を修正する?」
「多分な。昔を変えたら今も変わるだろうし。」
そっか。じゃあ僕は過去を壊して未来を変えるよ、ルルーシュ。」

部屋の空気が悪いのは、外が蒸し暑いからに違いない。
セミの声がいやにうるさく聞こえる。
それだけ、この空間は静まっている。

は?何、言って、」
「実はね、この僕は君が知ってる僕じゃない、未来から来た僕なんだ。」
「は、それは、随分大きな冗談だ。」
「あっちはひどく荒んでるよ。争いのせい、テロのせい、ゼロのせい、君のせいだ。」
「っ俺がゼロだと気付いて―――

慌てて椅子を倒して立ち上がるがもう遅い。
彼が後ろでに隠し持ってる物が見えてしまった。気付いてしまった。

「だからさ、今君を消せば多くの命が助かるよ?ユフィも、死なずに済む。」
「何でそこにユーフェミアが!」
「さぁ?未来の自分に聞いてみれば?」

茶化したように言っているが瞳は全く笑っていない。
見慣れたはずのエメラルドは、黒く汚れてしまっていた。

「ばいばい、ルルーシュ。」
やめっ―――

パン、と乾いた音がして、それっきり。

「さ、目的も済んだし帰ろうかな。」

戻った先は、本当に望んでいた世界なのかしら?
バッドエンドの幕紐は、悪魔の醜いその手の中に―――





***
 
 
【午後三時のお茶会】アニャルル
 
 
 
「ルルーシュには、エプロンがよく似合うのね。」
「そうか?こんなの誰が着ても同じだと思うが・・・?」
「違う。ルルーシュは特別。」

ぱっと見ただけでは分からないが、よくよく見ると少し柔らかい微笑みをのせている
アーニャを見て、まぁそう言うならそれでも良いか、なんてルルーシュは思ってしまう。
丁度お菓子を作っていた時に訪ねてきた少女を、ルルーシュはエプロン姿で出迎えたのだ。
携帯のカメラの餌食になったのは、言うまでもない。

「アーニャ、今日は何しに来たんだ?」
「別に。ルルーシュの顔を見にきただけ。」

ラウンズって暇人なのか?
そんなわけがない。何てったって、帝国最強の騎士達だ。
任務だって、いっぱいあるだろうに。

「仕事は、いいのか?」
「終わらせたから。スザクやジノはまだたくさん残ってたけど。」

ずず、お茶をすするアーニャはどこか不快そうだ。
二人と何かあったのだろうか?聞こうかと思ったが、やはり止めておいた。
特に自分が出来ることもないし。
だがその争いの発端が自分であることなど、彼は一生気付かないだろうが。

「自慢に送ってやろ、」

ぽつりとそう呟いて、携帯をかちかちいじりだす。
何を送ったのかは分からないが、アーニャの顔がひどく満足そうなのでよしとした。

「ほら、お茶のおかわりはどうかな?」
ありがとう。」










幸せな時間が、いつまでも望むままあればいいのに。






(何だこれ!なんでアーニャはルルーシュのエプロン姿持ってんだ!?)
(くそあいつ今一緒にいやがるな!?)
(わーー!!落ち着けスザク!俺たちももうすぐここ終わるだろ!それまでちょっとだから!!)
(一秒たりとも無駄にできるか!俺は今すぐルルーシュの所にいくんだぁぁぁ!!)


エプロン姿は、カードに速効保存しました。





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