三人はルルにべったり。ルルもそんな三人にべったり。 甘傾向なお話です。ちなみに騎士間の中は不仲(笑) 全員黒の騎士団in設定。
「紅蓮とモルドレッドは敵機を挟み撃ちにしろ。ヴィンセントは前方の機体を撃破だ!」
「「「―――了解ッ!」」」
ゼロ、ルルーシュの一声でそれぞれのパイロット達は自分の機体を器用に操り指示されたことを行っていく。スムーズに進む作業に、命令した本人も満足顔だ。
蜃気楼の中で得意気に微笑んで、盤上のキングを持ち一つ進めた。
「チェックメイトだ、ブリタニア軍。」
***
やがて任務を終え戻ってきた三人のパイロットは、足早に騎士団本部へと向かっていた。
その間会話は一切ない。否、ないと表現するのは間違っている。
声には出していない。しかし何となく空気で分かってしまうのだ。相手の心中が手に取るように。
(さっきわざとぶつかってきたの知ってるのよ!可愛い顔してやってくれるじゃない)
(だって邪魔だったから。それにカレンばっかり命令されてズルイ。)
(それを言うなら僕だって兄さんに命令されたいのに!二人ばっかりいい所取りやがって。)
(ブラコンは黙ってろ。それにアンタは日常でひっついてるんだからいいでしょう!?)
(誰がブラコンだクソアマ。僕はいつだって兄さんに頼りにされたいんだよ!)
(…二人とも操縦まだまだなんだから私に頼めばいいのに、ルル様)
((今何か言った??))
張り付いてる表情は笑顔である。
だがそれは水面下ではどんどんヒートアップしていた。
性格変わってるとかの問題じゃないぞ、これ。
そのまま長い廊下を延々と歩き続けた彼らは目的地へと辿り着くと、漸く争いを止めた。
…まぁ一時的なものには間違いない。
三人そろってドアの前で深呼吸、三人そろってノブを握り、三人そろって言った言葉は全く同じものだった。これだけシンクロしてるのに、仲良くできないのは一体何故なのか。
「「「ただいま戻りました、ゼロ!!!」」」
「お帰り、ご苦労だったな。みんな。」
にっこり、ご機嫌なのか最上級スマイルで微笑んで迎えてくれた主に、カレンたちも最高級の笑みで返した。やたら周りがキラキラして見えるのは気のせいである。…たぶん。
すでに仮面を外していたルルーシュは、チェスの駒を指で弄びながら鼻歌なんか歌っていた。
そんな敬愛する皇子の姿を見ながら、一番に弟のロロが口を開く。
「兄さんっ今日は僕六機も撃破したんだよっ!」
ね、褒めて褒めて、と子犬のような愛らしさでアピール。
一番に切り込んだロロの頭をいとおしそうに撫でながら、ルルーシュは甘く囁く。
もうどっちが懐柔されているのやら。どっちも立派なブラコンである。
「うん、見てたよ。すごかったなロロは。でもあんまり無茶はするなよ?」
「っうん!分かったよ兄さん!」
あぁぁ甘い、空気が甘すぎる。
絶対兄弟の範囲を軽々超えちゃってるなぁなんて突っ込みはしちゃいけません!!
もししようものなら暗闇で背後からブッスリ☆なんてことも考えられるのです。
兄さんのことになると容赦ありませんから。By.ロロ
「ロロより私頑張った。ね、ルル様褒めて?」
「あぁ、アーニャもよく頑張ってくれたな。」
ふんわり、ボリュームのあるピンクを撫でながら、ルルーシュは言った。
それから乱れていた少女の髪を手早く直して愛おしそうに笑む。
主からの最高の褒め言葉に、アーニャは少しだけ、頬を染め満足気になった。
そんな二人の様子を見ていて面白くないのがカレンだ。
性格がら「褒めて」なんかは間違っても言えない。が、やっぱり褒めて欲しい。
ここはプライドを捨てて言うべきか、それともこのまま引き下がって悔しい思いをするか。
二つに一つの選択に、カレンは思わず泣きそうになってしまう。
出来れば、どっちも選びたくないなぁ。なんて。
迷って迷って結局黙ることにしたが、ルルーシュはそんなところも察して苦笑した。
拗ねる騎士のひとりの傍に寄り、飾った言葉は無しに、ただ一言心を込めて。
「ありがとう、カレン。」
「―――っっ!べ、別に!…もっと、頼ってもいいんだから…っ。」
段々と尻すぼみになっていく返事を聞きながら、素直じゃないなぁなんて思う。
ルルーシュは三人三様な騎士たちを眺めて、ぽつりと一言呟いた。
誰にも聞こえないように。誰にも聞かれないように。
ただただこっそり、自分の気持ちに正直になって。
「俺の騎士がお前たちで、本当に良かったよ…。」
紡がれた言葉は流れて消えた。
何が満足かと言えば、みんなが傍にいることで。
何がご機嫌かと言うと、幸せを分かち合えること。
戦局が有利に進んだからじゃなく、勝利したからでもないこの感情は、
愛しく優しいあなたたちに向ける精一杯の感謝の気持ちなのですよ?
End.
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