キングと海とリボン

 

 

 

11話入る前に書いた小話。アニャ+カレン
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(…くそっブリタニアめ!)


拘束されて満足に抵抗も出来ないまま別室に監禁されたカレンは、何とかして抜け出してやろうと試みていた。
情けない、ゼロを守るどころか逆に助けられる立場になるなんて!
余計な行動を取らせてしまったと悔やむが、しかしもう後の祭りだ。
時間だけが刻々と過ぎていく中、突然扉が開いた音がした。目隠しをされているので分からないが、足音は軽い。
少なくとも自分と同じくらい、あるいはそれより小さい体つきなのだろう。
全神経を集中させ、近付いてくる主を警戒する。確実に近いそれに、カレンが諦めかけたその時。


「紅月、カレン…?」
「…っ!?」


耳に入ってきた声は、意外にも幼い少女のものだった。
それから急に明るくなる視界に目を細めると、ピンク色の豊かな髪が見える。
猿ぐつわも外されて、カレンは漸く口を開く事が出来た。


「あなた誰?どうして私を助けたの?」
「あなたなんて助けてない。私が助けたのはルル様。」
「…は!?何でルルーシュの名前が、」


腑に落ちない、と言った顔をしたカレンを少女は無表情に見つめる。まるで言う必要はないと言っているようだった。


「早く逃げた方がいい。…あぁ、あとコレ。紅蓮弐式のサブキー。ルル様から預かったもの。」
「あ、ありがと。」


敵なのだとてっきり思っていた。投げられたキーを受け取り、軽く柔軟運動をしてからもう一度少女の方を見やった。


「なに?」
「…ルルーシュは、ゼロは必ず守るわ」


決意のように響いた言葉を聞いて、一瞬驚いた顔をしてピンクの彼女は試すように微笑んだ。


「…そうじゃなかったら困る。」


軽く微笑み返して、逃走の準備。
少女が何者なのか結局分からなかったけど、またいつか会うことになるのだろう。
何となく同じ匂いを嗅ぎとった気がしたから。


「気を付けて、廊下にうろちょろしてる兵士が何人かいる。」
「分かったわ。…ありがとう。」
「どういたしまして。あと―――ルル様によろしくって」
「伝えておけば良いのよね。ま、あたしが無事に出られたらの話だけど!」


少女は何も言わない。ただ早く行けと目で促すばかりだ。
そんな様子に一礼して、カレンは手の中の可動キーを握り締める。


(待ってて、私のただ一人のキング…)




End.





***
行楽シーズンルル総受けin海。




「兄さんはい、日焼け止め。折角白いのに、焼いたらもったいないよ。」
「もったいないとかあるのか日焼けに…ありがとうロロ。」
「…ルルーシュ、はい。」
「ん?カレンか。て、あの。それは?」
「見て分かんないの?傘持ってんのよ傘。今日は日差しが強いから。」
「いや、それ俺の方に日陰ができてるんだが。」
「あんたの方に作ってんのよ!焼けたらもったいないでしょ!!」
「お前もか…。そんなにもったいないか?」
「「当たり前でしょ!!!」」
「せーんーぱいっ!はい、お水。のど乾いただろ?」
「悪いなジノ。ありがとう。」
「いやいや、先輩のためだから。」
「……ルルーシュ、」
「ん、アーニャ。どうした?」
「これ、作ったから。あげる。」
「かき氷!良いのか?俺が貰っても?」
「良いの。みんなのもあるから、良かったら。」
「あら、ありがとう。」
「アールストレイム卿にしては珍しいですね…?あ、いただきます。」
「サンキュー、アーニャ!」
「ルルーシュはぶどう、私は桃、ロロはキャラメル、カレンは苺、ジノはパイン。」
「あぁ、イメージカラーってやつか?」
「そう。はい、ルルーシュ。」
「ねぇ、僕のは?」
「ひっ!す、スザク、いつからそこに?」
「やぁルルーシュ、相変わらず可愛いね。襲っちゃいたいくらいにさ。」
「ふざけるなっ!あぁもう変なところ触るな!」
「ま、冗談はこのくらいにして。アーニャ、僕のかき氷は?」
「…ない。(にっこり)」
「うわぁ何そのいい笑顔。君のそんな顔初めて見たよくそムカつく。」
「メロンはなかった。…あぁ、イカスミならある、けど。」
「何それ僕のカラーは黒って言いたいわけ?」
「違うの?腹の中とか、そうでしょ。」
「あわわわわ…アーニャとスザクが大変なことに…何とかしろジノ同僚だろ!?」
「無理言わんでくださいよ先輩!いくらなんでも無理ですって!!」
「覚悟はいい?アーニャ」
「後悔するのはそっち。」
「あぁ…かき氷がおいしいな。ぶどう味。」



 



***
アニャの髪を結ぶルル様。






「なぁ、アーニャ。ちょっと来てくれないか?」
「??何、ルル様?」


主人直々の呼びつけに戸惑いながらも、素直に傍に寄って行く。
ここに座って、と椅子を引かれてアーニャはよく事態を飲み込めず不安な顔をした。
それを読みとったルルーシュは苦笑して、ドレッサーの前に出したブラシを手に取る。


「アーニャ、前向いてて。」
「っあ、はい!」


シュルリと髪を結っていたリボンが解かれる姿が鏡に映っている。
ルルーシュの手はどこまでも優しくアーニャの髪を撫でた。


「ちょっと痛いかもしれないが、我慢しててくれ。」


髪の間をブラシが通る。
引っかからないようにゆっくりとやってくれているのか、痛みはそんなにない。
やがて梳かし終えたのか、鏡の中のルルーシュの顔は満足気に微笑んだ。
あ、可愛い。なんて素直に思う。
写メを取れないこの手が憎らしい。
きっとコレクションの中では、一位か二位を争うほどいい笑顔なのに!


「アーニャの髪はふわふわだな、」
「ふわふわ、ですか?」
「あぁ、ふわふわ。」


それからルルーシュはいつもアーニャが自分で結っているように髪を持ち上げて、
リボンでひとまとめにして出来上がり。


「さ、終わり。どうだいアーニャ?」
「あ、ありがとうございますっ。」


鏡で確認すると、綺麗に纏まった髪がふわふわ揺れている。
と、目についたのはいつもと違うリボン。


「あの、ルル様、このリボンは…?」
「あぁ、アーニャに似合うと思って。迷惑だったかな。」


しょぼんとして言うルルーシュにアーニャは猛烈に首を振った。
この主が、至愛の方が私のために。
そう考えると嬉しくて飛び上がってしまいそうなくらい嬉しい。
水玉模様のリボンは、この日から私の一生の宝物となった。


「ルル様っありがとう!」
「どういたしまして、アーニャ。」


そう言って笑ったルルーシュの顔を、今度こそ写メ!







(ほあっ!!い、いきなりはずるいぞ!アーニャ!)
(だって、ルル様、可愛いんだもの。)
(可愛くないっ!)




貴方も、私の大事な宝物。
一生大事にするからね?






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