だから彼らは最善を尽くすのです(後編)

 

 

 

ガラスの破片が散らばる階段を駆け上がり、銃を構えたテロリストの姿を見つけた。
そっと物陰に隠れて息を殺す。出るタイミングを計っていると、丁度よく後ろを向いてくれた。
ジノがチャンスと言わんばかりに駆け出して首の後ろに一発、決めてやる。
それに気づいた団員がもう二人、飛び出してくるがそちらは既にケリはついている。
短いスカートから見事な足技を繰り出したアーニャが速攻で沈めていた。
なかなかなコンビネーションに互いに目配せし合う。
 
 
「ジノ、意外とやる」
「意外は余計だろ。そーゆーアーニャだって、」
 
 
彼女の足技をまねて、後方から忍び寄ってきていた奴に一発。
どさりと身体の崩れる音。見事こっちもクリーンヒットだったらしい。
だが調子に乗ったのもつかの間、さらにその上の階、3階からサザーランドが降ってきて二人を踏みつぶそうと足を振り下ろした。
間一髪で二人は体を捻って避け、機体はバランスを崩し下へと落ちて行く。
ただ、その落ちた先には守らなければならないルルーシュがいて。
身動き一つ取れず逃げられない彼の元に必死で向かうが間に合わない。
 
 
「「ルルーシュ様ッッ―――!!」」
 
 
だが、機体とルルーシュとの間に割り込むようにして紅い影が入る。
落ちてきたサザーランドを軽々別方向へ投げ飛ばすと、ルルーシュの方に向き直った。
 
 
『ルルーシュ!怪我はない!?』
「…おかげ様で、と言いたいところだが俺はこんな話聞いていないんだが。」
『…っすみません。下の者が独断で、』
「早く引け。もうじきランスロットが飛んでくるぞ?」
 
 
まぁ、もう遅いが。と言ったルルーシュの顔はどこか諦めているようだった。
冷めた顔を遠くから見ているジノとアーニャは、紅いナイトメアのパイロットとルルーシュが親しげに話すのに付いていけず思考がフリーズしてしまっている。
しかしそれも一瞬のことで、飛んできたランスロットがあろうことかそのままルルーシュのいる方に突っ込んできたため、心臓をひやりとさせて気を取り直した。
なんて危ない事をするのかとジノがスザクに叫んだが、全く聞こえていないらしい。
 
 
『ルルーシュ…やっぱり記憶が戻っていたのか!』
「…だとしたら何なんだ。俺を殺すか?枢木スザク」
『もう一度ブリタニアに突き出すだけだ!』
 
 
ランスロットがルルーシュに向かって手を伸ばすが、紅蓮がそれをうまくはじき返す。
そうしてそのまま攻防になるのを見ていたルルーシュを、ジノとアーニャが少しでも安全な場所へと連れ出した。大分二機と距離を置いてから、二人は改めて彼を見る。
 
 
「ルルーシュ様、お怪我は?」
「ルル様…大丈夫ですか?」
 
 
そう言って手を伸ばせど、ルルーシュは身を引いてしまって届きはしない。
 
 
「お前たちも…俺を売るのか…?」
「―――ッ!?」
 
 
悲壮な声でぽつりと呟いた主の手を、二人の騎士はそっと慈しむように握った。
優しく、優しく、気持ちを全て伝えきってしまうかのように。
 
 
「私たちは、貴方を絶対に裏切らない。」
「絶対にこの手を放さない。」
「ずっとずっと、この命尽き果てるまで、」
「永久に、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様と共におります。」
「…おまえたち、」
 
 
誓いの言葉を言いきって微笑んだ彼らに、ルルーシュは深く感謝した。
そして、彼らにとってもっとも価値のある、
 
 
「ありがとう。ジノ、アーニャ。」
 
 
少し涙の滲んだ、素敵な、笑顔で。
 
 
それを見た二人は、微笑み返して主の敵をギンと睨みつける。
紅蓮が交戦しているが、少々押され気味なのも事実だ。
こんなとき愛機があれば、と下唇を噛む。守ることが、出来るのに―――と。
そんなときに届いた声は、ずいぶんと間のびしたほがらかで場違いなもので。
 
 
「ヴァインベルグ卿もアールストレイム卿も、そんなに落ち込むことないよぉ!」
「―――っの声!まさかっ」
「そのとぉ~り。ルルーシュ様のロイドが来ましたよぉ~」
「いつから、お前は俺のものになったんだ?ロイド、」
 
 
仏頂面ながらも、ルルーシュの声は嬉しさをにじませている。
主を勇気づけてくれたことに感謝しながら、ジノとアーニャは愛機に乗り込んだ。
いつもの通りに動かして一人で戦っていた紅蓮のサポートにまわる。
3対1で分の悪くなったスザクが悔しそうに後退するのを見て、ロイドは満足げに笑った。
 
 
「ごめんねぇスザク君。君のことはパーツとしては好きだったんだけどね~」
 
 
ルルーシュ殿下のこととはまた、別モノだからさ。
冷ややかに言うとくるりと踵を返してルルーシュを後ろにかばう。
焦るスザクを、三機が円を描くように取り囲んだ。
 
 
「そーいうわけだからさ、スザク。」
「私たちは今日からルル様の下につかせてもらう。」
「ジノっ!アーニャ!どうして、ルルーシュはゼロなんだぞ!?」
 
 
この期に及んでまだ言うか、とカレンが眉間に皺を寄せた。
それだけで、どれだけルルーシュが傷ついたか知っているのか、と。
 
 
「スザクさぁ、それ私たちにとってはどうでもいいことなんだ。」
「―――なっ!」
「ゼロだろうが…私たちにとってはたった一人の主君なんだよ!」
「貴方も騎士なら分からないはずない。」
「ばいばいスザク。」
「これ以上ルル様に悪口聞かせるわけにはいかないから。」
 
 
ただし会った時は容赦しないけど、と付け足してトリスタンとモルドレッド、それに紅蓮が戦線を離脱する準備を始めた。
ルルーシュとロイドを手のひらに乗せた三機は昼間の破壊されたショッピングモールを飛び出して空の彼方へ飛び去っていく。
そしてそれを追いかけようとはしないスザクが悲しげな声でぽつりと呟いた。
 
 
「どうしていつもすれ違っちゃうんだろうね、ルルーシュ…」
 
 
見つめた幸せは同じものだったはずなのに、と呟かれた言葉は伝えたい人には届かなかった。
 
 
 
 
***
 
 
 
 
「まったくお前たち…これからどうするつもりだ?」
「そりゃもう、年中無休ずーっとルルーシュ様と一緒にいますよ!」
「24時間。」
 
 
騎士団本部についてから、ルルーシュの両脇について離れないジノとアーニャが言った。
無論、それを羨ましそうにチラチラ見るカレンやら、殿下殿下と全く相手にされていないロイドやらも忘れてはいけない。
その様子をおかしそうに見つめながらひょっこり現れたC.C.はぷくくと笑った。
 
 
「モテモテだなぁルルーシュ。私も混ぜてくれ。」
「ばっ来るな魔女!ええいもう!何なんだお前たちは!!」
 
 
ルルーシュの叫びを聞いて、言うまでもないと騎士たちは笑う。
 
 
「「勿論、貴方の味方ですよ。ルルーシュ様」」
 
 
 
 
 
 
End.
 
 
 
 
 
後書きという名の反省文
 
本当に申し訳ありませんでした諏訪様…!!
こんなものしか私には書けませんでした素敵なリクエストに応えきれなくてすみませんorz
総受けにもあまりなってない上にスザクの扱いが大変なことに←
しかもいろいろ矛盾だらけなのは突っ込まないであげてください。
「ふざけるなぁぁぁ!!」と言っていただければ即行書き直す次第であります…。
ルル総受けでジノアニャ騎士設定なゼロバレでした。遅くなってしまってごめんなさいです!