いわゆる大人キラー

 

 

 

 

 
 
 
*もし上から降ってきたのがルル様大好きっ子アーニャだったら。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あの痴れ者を排除しなさい!皇帝陛下を嗜虐した大罪人です!」
 
 
ギネヴィアの発した鋭い声に従って、数人の兵士達がルルーシュに槍を向けた。
よく研がれた先端が揃って狙いを串刺しにしようとする、が。
何か策があるのだろうか、一切余裕の表情を崩さない彼の前に小柄な何かが降ってくる。
それが、新皇帝の前に立ちはだかる全てをあっというまに蹴散らした。
 
 
「この方には指一本触れさせない…」
「……あれ?」
 
 
パンパンッと手を払ってすくと立ち上がったのは一人の少女。
まごういことなくナイトオブシックスのアーニャ・アールストレイムだ。
彼女の読めない顔とは反対に、ルルーシュはひどく驚いた顔をしていた。
アーニャはそんな彼の元に恭しく跪くと、礼をし静かに告げる。
 
 
「ルル様、遅くなってしまい申し訳ありません。」
「な…な、でアーニャがここに?」
 
 
思考回路が途中でストップしてしまったのか妙に舌足らずにルルーシュが言う。
どうやら混乱しているのは皇族貴族の皆様だけではないらしかった。
とそこで、少女の丁度真上から今度は大きな物体が降ってきた。
スマキのようにぐるぐる巻きになっているそれは、苦しげな呻きを漏らすと辺りを這いまわる。
…ぶっちゃけ、見た目的には非常にいただけない。
 
 
「む゛ーーーーッ!!んんーーーッ!!」
「ひぃっ!?なんか動いたっ」
「…しぶとい奴。」
「むぐっぐぐぐ!!ぐぐっ!」
 
 
むぐむぐ声にならない声を上げ続けるスマキを、アーニャが容赦なく踏みつけた。
 
 
「―――っっぐ」
 
 
苦しみにもんどり打つスマキの紐が緩んで中から出てきたのは、本来ここに登場するはずだった本当の騎士だ。呼吸困難で青い顔をしながらぜぇはぁ荒い息をする。
着込んでいた学生服は乱れに乱れ、それだけでものすごく痛々しい感じだった。
 
 
「スザク!?お前…何そんなところで遊んでるんだ…?」
「君はこの姿を見てまだそんなことを言うのか!?どんだけ鈍いんだよもう!」
「なっ!大体お前が来ないからアーニャが来てくれたんだぞ!もしそうじゃなかったらどうなっていたか…。」
「そりゃ当り前だよ!何せその女は意気揚揚と準備してた僕を拘束してスマキにして箱に閉じ込めた挙句部屋も厳重ロックしていきやがって自分が無理やり出て行ったんだから!」
 
 
息継ぎなしに一息で叫ぶと、スザクは酸欠で死にそうになっている。
むしろその状況からどうやってここまで来たのかの方が気になったが、死にかけている彼に尋ねるのは酷だと思いルルーシュはあえて聞かないことにした。
そしてくるりとアーニャに向き直り、聞きづらそうにして重い口を開く。
 
 
「あの、アーニャ?」
「何、ルル様?」
「スザクは本当に君が…?」
 
 
伏し目がちに言うと、アーニャはむすっとした顔で答える。
いかにも不満だという瞳にはよく見ると薄く涙の膜が張っていた。
 
 
「だって、私だってルル様の騎士って認めてほしかった。」
「…アーニャ!」
「ルルーシュ?そのせいでとんでもなくひどい目にあった僕の事忘れてないよね!?」
 
 
焦ったようにスザクが口をはさむが、ルルーシュは全く聞いていない。
がっくりとうなだれた青年に憐みの視線を送るのは周囲の皇族たちだ。
せっかく主のために死ぬ気で脱出してきたのに、その主に認められないなど不憫すぎる。
 
 
「アーニャ…君って子は…」
「ルル様?」
「俺なんかの騎士で本当にいいのか?」
「当たり前、です!」
 
 
急にほのぼのらぶな雰囲気になった場に誰も突っ込めはしなかった。
それどころか、むしろ二人を可愛いものを見るような目でみている。主想いな幼い騎士と見目麗しい美少年皇帝のタッグだ。もうこのままいけばいいんじゃない?みたいな空気に移りつつあった。それを肌で感じ取ったスザクは、「小動物パワーって怖い!」と本気で思ったという。
 
 
 
 
 
 
 
 
End.