「ジノ、重い。」
圧し掛かってくる重たい身体は、ルルーシュの力では跳ね除けることもできない。
頭一つ分高い所に見えるアクアマリンに訴えるも、きょとんとした目をして「えー」と駄々をこねられてしまった。そんな大型犬に小さくため息を漏らして、ルルーシュはこれ以上の足掻きは無駄だと諦めた。
えらく機嫌が良さそうなジノに苦笑して、少しだけ自分からもすり寄ってみる。
香水の匂いなのか、ふわりと香る爽やかさに目を細めているとジノは驚いたようにして口を開いた。
「せんぱい、」
「ん?どうした?」
段々と眠たくなってきて、呂律が回りきらないままに答えるとルルーシュの身体にかかっていた重さが急に消えて、ついでに視界もくるりと変わる。気がつくとジノに抱きかかえられていて、そのままソファまで横抱きで連れていかれた。ジノは一度ルルーシュをだっこするようにすると、そっとソファに座る。
体重で沈んでいく感覚が心地よくて、自然と二人とも瞼が下がった。
しばらくうつらうつらしていると、ルルーシュの方が先に眠りに落ちたらしく、規則正しい寝息が聞こえてくる。艶のある黒髪にジノは顔を埋め、零れる甘い香りをいっぱいに吸い込む。
長い睫毛がふるりと震えるのも構わず、そっと前に回していた腕の力を強めた。
「先輩、寝ちゃったの?」
彼の耳元で尋ねてみたが、目を覚ます気配はない。
代わりに身じろぎを一つして、きゅうとジノの制服を細い指が掴んだ。
無意識だったのかもしれないが、それは男の理性を粉々に打ち砕くには十分すぎる破壊力で。
ごめんと心の中で謝りながらも、少しルルーシュの顎を持ち上げてその桜色の唇を慈しむように啄ばんだ。思ったより柔らかいそれに夢中になって、思わず舌まで差し込んでしまう。
途端に漏れた息苦しさを訴える声に気を持ち直して、ジノは慌てて繋がっていた唇を離す。
幸いルルーシュが目を覚ますことはなく、何事もなかったようにまた寝息を立て始める。
ほっとすると同時に自己嫌悪に陥る自身の頬を、情けないと言わんばかりにつねった。
(何してんだ私は!がっついたらダメ!絶対!)
あうあうと唸ろうが、してしまったという事実は変えられない。
起きたら素直に謝ろうと、しゅんとアクアマリンを潤ませる。
あの変にプライドの高いルルーシュのことだから、そう簡単に許してもらえるわけがないのだけれど。
(いっそのこと、ストレートに告白する…とか)
思ってすぐに、これは無理だと首を振る。
振られてしまったら自分は一生立ち直れないかもしれない。
むしろショックでラウンズ辞めて引きこもりとか…はないけど!
嗚呼、こんなに好きな人が近くにいるのに何もできない言えないなんて、そんなの生殺しもいいところだ。どんな夢を見ているのか良い顔をして眠るルルーシュに、ジノはがっくり、頭を垂れたのでした。
改善薬とかありませんか!?
(ヘタレ具合を直したいんですけどっっ!!)
End.
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