《昼下がりに爆弾投下!》
生徒会の昼食風景はいつも賑やかである。
それは転入生のジノとアーニャが加わってからも同じことで、むしろ賑やかさは倍だ。
皆がそれぞれの弁当を手に部屋にきては、楽しい団欒が始まる。
ただし、今日は若干一名・手ぶらでやってきた人物がいた。
ナイトオブシックス、桃色の髪を豊かにまとめた中等部の少女、アーニャだ。
一同どうしたのかという目で彼女を追うと、アーニャはするするとある場所に向かう。
歩む先には麗人がいた。麗しい黒髪にキラキラ輝くアメジストの瞳。
アッシュフォード学園が誇る超絶美人のルルーシュが、穏やかな笑みを湛えアーニャを手招きしていた。
珍しい組み合わせにミレイやリヴァルは唖然となり、ジノは情けない様な羨ましいような顔で様子を窺う。
そんな周囲もお構いなしに少女はルルーシュの隣に腰かけると、すぅと彼を見つめた。
まるで何かを期待しているような待っているような瞳だ。
それに応えてルルーシュは脇から几帳面に包まれた重箱を取り出した。
いつもの彼の弁当は小さなお弁当箱だ。しかし今日に限って重箱。それに手ぶらのアーニャ。
ここから考えられる事実は一つしかなく、かなりルルーシュのことを好いていたジノは顔を真っ青にした。
「あ、アーニャ…お前、それ、」
「ジノも食べたい?でもあげない。これは私がルルーシュにもらったもの。」
あまり表情の変わらない彼女が自慢げに言っているのを聞いて、ジノはふらりと眩暈を感じた。
こんなに感情を表に出すなんて珍しすぎる。これをサインととると、アーニャはルルーシュにベタ惚れなのだろう。
しかも自分は先を越されたことになる。しかも本命だったのに!
地団駄を踏んで悔しがるジノを横目に、アーニャは卵焼きを口に放り込んだ。
料理上手なルルーシュが作っただけあって文句なしのおいしさである。
不安げに「どうだ…?」と尋ねてくる想い人を安心させるよう、アーニャは素直に感想を述べた。
「…おいしい…。」
「良かった、口にあってなによりだ。」
「て、いうか。」
「?何だ?」
「ルルーシュが作ったものなら何でもおいしい。」
さらりととんでもないことをぬかすアーニャに、その場にいたメンバーは絶句した。
もちろんそれを至近距離で受けたルルーシュも例外ではなく、どこぞの乙女のように頬を赤らめている。
そんな彼を「あらやだ可愛い」と評したのはミレイだ。
照れたのを隠そうとしながらあたふたするルルーシュは確かに犯罪級の可愛らしさだった。
この場にセブン様がいなくて正解だろリヴァルはため息をつく。
いたら、それはもうマッハのスピードで拉致監禁していたかもしれない。
高らかに笑うスザク像をかき消して、リヴァルはルルーシュとアーニャの様子を再び窺う。
―――空気は、よりピンク色になっていた。
「俺は、その、アーニャがおいしいって言ってくれただけで嬉しいし…」
「じゃあ私はルルーシュが嬉しければ嬉しい。そんなことでルルーシュが喜んでくれるのなら何回だって言う。」
「あのな、そんなことって俺にとってはすごく大事な……!、あ。」
言ってから気がついたのか、途端ゆでダコのように赤くなるルルーシュは先ほどの比でないくらい赤い。
アーニャも正直驚いたのだろう。さくらんぼの色をした瞳が大きく見開かれている。
それから小さな笑みを零し、アーニャはルルーシュの耳元で囁いた。
「おいしいお弁当をありがとう、ルルーシュ。また作ってね?」
「あ、アーニャがそう言うんだったら…俺は、いつでも構わない…ぞ」
らぶらぶな二人を尻目に、その他のメンツが食事途中でお腹一杯になったのは言うまでもない。
End.
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